賢者は路傍の石からも学ぶ
「もっと中身が濃いと思ってたのに~。」
「あのセンセイの言うこと、なんか浅いよね~。」
セミナーでも、書籍でも映画でも、コンテンツと呼ばれるものはそうですが。
コンテンツを提供される側(つまりお客さん)が満足するかどうかは
全ては提供する側や、提供するモノの質にかかっている-
その認識が一般的でしょう。
しかし、提供するモノから何を得るのかについては、お客さん次第でもあると思うのです。
コンテンツの質を高めるのは、提供する側と提供される側との共同作業といえるのではないでしょうか。
そのことを端的に表したことばはコレだと思います。
「賢者は路傍の石からも学ぶ」
これは衝撃的な本でした。
内田樹さんの著書「映画の構造分析―ハリウッド映画で学べる現代思想」
「みんなが見ている映画を分析することを通して、ラカンやフーコーやバルトの難解なる術語を分かりやすく説明すること」
この本の目的を、内田樹さんはこう語ります。
まさに、この本で取り上げる映画はなかなか秀逸です。
いかにも哲学と親和性の高そうな映画-たとえば「惑星ソラリス」「2001年宇宙の旅」「ベルリン天使の詩」などを題材にするのではありません。
内田センセは大胆にも、大ヒット大衆映画で語ってみせたのです。
「エイリアン」「大脱走」といった、手に汗にぎる娯楽アクション映画でさえ
内田センセの手により、まな板のうえで見事に捌かれるのです。
観る人次第で、ここまで内部構造が読み取れるのか・・・ページをめくるたび、ほ~~~っ、はぁ~~~っ以外の言葉を失ってしまいました。
それに留まらず、私にとっての極めつけは、これでした。
「ゴーストバスターズ~♪」
主題歌をうたうレイ・パーカー・ジュニアの能天気なかけ声に、聞き覚えはないでしょうか。
この前かなり久々に観てみたところ、やはり私にはお気軽なコメディ映画以上のモノは見出だせなかったのです。
お化け退治や巨大お化けマシュマロマン、それと哲学や思想と
はたして、どうクロスするのか、見当つきませんでしたが。
ゴーストバスターズ3人組が(フロイト的な)真の分析家である理由や、何がヒロインの意識化されていないフラストレーションを表しているのか・・・など。
賢者の手にかかると、人の心を巣食うトラウマの本質に触れた一級作品へと様変わりしたのです。
お手軽なファーストフードが、滋養たっぷりのソウルフードに変わったかのごとく。
内田センセの解釈が正しいのかどうかは、また別だとしても。
素材は同じでも、受け取り手次第で、引き出せる栄養は随分変わることを改めて再確認しました。
お客さんの立場ではどうしても、コンテンツを提供する側に全責任を押し付けがちですが。
しかしお客さんである私たちも、路傍の石から十分学べるポテンシャルを秘めているのではないでしょうか。
自戒もこめて・・・。