話を聴きさえすればいい?

「悩んでる人に対して、話を聴いてあげるだけでも気が楽になるからね。」

もう20年以上前の話になりますが、知人男性が事あるごとに言ってました。

その頃の私はコーチングなどとは無縁の、一介のOLにすぎませんでしたが。

話を聴くことの大切さは、おぼろげながら感じてました。

しかし静かに頷いていたものの、どこか小骨が引っかかった感じが抜けなかったのです。

 

「まずはとにかく話を聞くこと。」

いわゆる傾聴は、コーチングやカウンセリングの基本中の基本とも言えますね。

私も誰かに、どうしようもなく話を聴いてもらいたいときはありますから。

心が軽くなる、癒されるのは、本当だと思います。

ただし半分は、ですが。

 

こんなことが あった

あんなこと 言われた

微に入り細に入り、臨場感たっぷりにストーリーを相手に語ります。

聴いてほしい一心ではありますが

分かってほしいのは、ストーリーではありません。

気持ち ・・・ ひとことで言ってしまうとそうですが

もっと強い何かです。

それは 「音」として

「ことば」とともに伝わるのではないでしょうか。

気持ちの奥にある 心の叫びが

 

誰かに何かを聴いてもらいたい 

けれど それだけでは たどり着かない

自分でも 本当の気持ちがわからない

人はさまざまな「ことば」を通して、音色を響かせます。

悲しさ 寂しさ 切なさ 憤り・・・

響かせるものによって、音色は微妙に変わりますし。

悲しさ ひとつとっても 音階がいくつもあります。

「あぁ・・・そうなんですね」

聴いた人が思わず発したことばの響きと、叫びが同じ音色だったとしたら

ことばはたとえ拙いものだとしても

伝わった 響き会えた そう実感できるのではないでしょうか。

 

「話を聴くだけで、相手は気が楽になる」

冒頭の言葉にしっくりこなかったのは、今ならわかります。

話を聴くこと自体が目的化してることを、口ぶりから感じとったからです。

何のために 話を聴くのか

その原点に向き合い続けること

話の内容に惑わされず、本当の音を聴き続けることが

こころを扱う仕事 - 例えばカウンセラーやコーチの役割の一つだと私は思います。