その本音だけが本音ではない

「この際だから、本音とか思ってることを何でも言いあおうよ。」

かつて、そのまま真に受けて、口にしたことがありますが・・・。

炎に包まれる結果となりました(笑)

相手が想定する本音や、受け入れ範囲を超えたせいでしょうか。

それとも自分が本音を言うのはOKだけど、私からは本音を言われたくなかったのでしょうか・・・ホンネでは。

 

改めて「本音」という言葉を辞書で調べてみました。(大辞林 第三版

  1. 本心から出た言葉。 「 -を吐く」 「 -を漏らす」
  2. 本当の音色。

本音を吐くとか、漏らすといった言葉は日常でも使いますね。

本人に言うと軋轢があるが、本当は言いたいこと-

こういう定義やイメージが一般的だと思いますが。

辞書が指すとおり、本心から出た言葉であれば、本音もいろんな種類があるのではないでしょうか。

 

「人の言うことをいちいち気にしなくなったと主張するけれど。
 あの人は今でも、人から指摘されたら怒り出すじゃん。」

例えば、こういう本音を心に秘めたとしましょう。

一つの事柄、一人の人に対しても、ベクトルが異なる複数の思いを同時に持つと私は思います。

一度でいいから、面と向かって言ってやりたいことだけが、その人の本音全てではありません。

むしろ、本音のなかの一つではないでしょうか。

 

言い放ったら、スッキリするだろうなぁ~とニンマリしてみても、こころが口止めすることもあります。

「相手に嫌われたくない。」

「物分りが悪いと思われたくない」

「自分の言い分は分かってほしいけど、怒られたくない。」

恐れが生み出した言い分、これも本心であり、本音といえるでしょう。

これらは本音のなかでも、自分で自覚しやすい類かもしれませんね。

さらに心にツッコミをいれると・・・赤裸々な言い分が出てくるでしょうか。

「言い返されることなく、ただたたごめんね・・・と分かってもらえたら。」

「私が言うのは齟齬があるので、相手がグゥの音も出せない人から言ってもらいたい。」

あることすら認識しにくい、そんな本音が露わになるかもしれません。

 

ただし、本音には別の側面からのもあります。

本音のもう一つの意味は、「本当の音色」です。

心の奥の、繊細で柔らかいところにある思い。

そこから、人としての音色が響いてこないでしょうか。

「アレに対しては腹が立つけど、本当はいい人と分かっているから・・・。」

「本当は仲良くし続けたいから・・。」

過去には、親しい人のことを散々けなしたあとに、本当の思いをポロッと口にする人もいましたが。

絡みつく本音をヒモ解いた先に出てきた、相手を大切に思う気持ちかもしれません。

 

いっそブチまけてみたい、そう思いながらも、躊躇する理由は

その本音だけが、本音ではないからだと思います。

それでも、言い争いを覚悟で「本音」を伝える場面はあるでしょう。

その場の感情に流され、言い分を認めさせることだけに執心せず

心の奥では、本当の音色も響かせていたいですね。