パラサイト 半地下の家族

史上初、非英語作品が米国アカデミー賞作品賞を獲得したことで話題になった作品です。

貧困、格差社会、社会問題・・・というと、話題になった日本映画「万引き家族」を彷彿させますね。

半地下にある住居に、家族4人がひしめきあいながら住むキム一家。
富豪であるパク家に、キム家の長男ギウが家庭教師として潜り込んだのをきっかけに、家族がパク家へと次々と入り込んでいきます。

長女のギジョンは坊っちゃんの美術教師として、父はお抱え運転手、母は家政婦と。
ただ、パク家では、新しく雇い入れた人々が家族同士であることは知りません。
家族それぞれが偽名を使い、赤の他人のフリをしていたからです。

しかし、たまたま同じ場所に居合わせた父(運転手)と母(家政婦)に向かって、パク家の坊っちゃんは鼻をクンクンしながら言い放つのです。

この二人、同じ匂いがする、と。

子供ゆえの無邪気な発言に、指摘を受けた父と母は凍てつきました。
坊っちゃんに指摘されたあと、キム家の父は何度も、自分の体臭を確かめるようになったのです。

恐らくその匂いは、劣悪な半地下という住居環境が染み込んだものでしょう。
体臭は残念なことに、自分では「どんな臭いなのか」に気づくことはできません。

大人であれば、他人に対して指摘することは躊躇します。
しかし、どれだけコギレイを装っていても、丁寧な話し方をしても、ごまかせません。
IT企業の社長であるパク家の父は、「運転手が発する匂い」に気づいていたのです。

匂い、臭う
人に対して使うとき、どのような場面でしょうか?

「あの人から、心が清らかになる匂いがする」
そのようなポシティブな表現と結びつくことは、あまりありません。

「あの人の周りは、きな臭い事件が多い」
「あいつから、金の亡者の匂いがする。」

怪しげものを察知するときに、顔をしかめながら使う言葉ではないでしょうか。

同じ人間同士であり、かれらは同じ民族同士です。
しかし彼らの間には経済格差、「持つ者」「持たざる者」といった隔たりがあります。

トランプゲーム「大富豪」のように、「持たざる者」が「持つ者」へと移動するのは至難の業です。
手札を駆使して、少しずつ少しずつステップアップするのが定石です。
しかし、「持つ者」が「持たざる者」へと移動するのは、どうでしょうか。

ゲームでも「大富豪」は負けた地点で、一挙に「ド貧民」へ転落します。
そう、判断ミスひとつで転落する可能性があるのが、「大富豪」の立場です。

パク家には築き上げてきた資産や地位があります。

動物が、危険を察知するため、嗅覚を研ぎ澄ますように。
明らかに違和感があるもの、危なげなものを嗅ぎ分けていかなければ、富や立場を守りきれません。

「持たざる者」はもちろん、「持つ者」も必死です。
その足元は簡単にすくわれるからです。

逆に「もたざる者」は、チャンスの匂いを嗅ぎつけ、自らつかみ取らなければ、這い上がることはできません。

生き馬の目を抜く資本主義の残酷さをにじみ出しながらも、次々と出てくる意外な展開に目が話せない、一級の作品でした。