トップガン マーヴェリック

まだまだ人生が始まったばかりだった、高校生のころ。
とある休みの日、友だちと出掛けたのは、繁華街ど真ん中の映画館でした。
スクリーンの向こうで駆け抜ける戦闘機、それを乗り回す爽やかな青年の笑顔がとにかく眩しすぎたのを憶えています。

あれからもう、30年以上の月日が流れました。
中年とよばれる年齢まで生きてきたにも関わらず、相変わらず人生に不慣れなわたし。
青春時代から、思えば遠くにきたとしみじみ感じ入ってた矢先に、ニュースが飛び込んできたのです。

あの映画が帰ってくる・・・
そう聞くと居ても立っても居られません

高校生だった私も中年になった私も、眼の前を広がるスクリーンに釘付けです。
手に汗にぎる派手なアクションに息を呑みました。

1986年。初めて観たトム・クルーズは、なかなかの衝撃でした。
アメリカを体現しているかのような豪快さ、太陽のように広がる笑顔。
本作を足がかりに、彼自身は世界的大スターへの階段を一気に登り詰めたのでした。

もう続編は作られないし、マーヴェリックは永遠に青年のままだろう・・・。
そう決め込んだ私たちの目の前に、トム・クルーズは再びマーヴェリックとして現れました。

トム・クルーズは、言わずとしれた私たち世代の「大スター」です。
彼と同時代を生き抜いてきた私たちですが、彼ははるかかなたにある第一線を走り続けました。
それは、畏敬としか言いようがありません。

彼がトム・クルーズでいるために、どれだけの努力を重ねてきたのでしょうか。

鍛えられたボディ、キレのいいアクション、立ち居ふるまい。
どれもこれも、若き日のマーヴェリックを損なわない姿でした。

年齢を重ねるとともに、枯れた姿をさらけ出す俳優さんもいます。
それはそれで、味わい深いものがありますが。

トム・クルーズは違っていました。
どこか青年のような若々しさを残したまま、老いに向かおうとしています。

いつみても トム・クルーズであること
変わらないために 変わり続けていくこと

これがどれだけ多大なモノを強いるものか、想像も及びません。

いつ上半身を晒しても大丈夫なボディ、ソレを維持するためには日々の鍛錬は欠かせません。ただしこれは、分かりやすく目に見える部分ですね。

一方で精神面は、どうでしょう。
トップスターとして君臨し続けることは、私たち一般人には考えも及ばないほどの精神的負荷がかかるのではないでしょうか。

常にさらされる好奇な視線に、耐えられない芸能人も多いと聞きます。
スターである限りは、そう簡単に弱さをさらけだせないでしょう。

メンタル面でも、相当の鍛錬を迫られます。

トム・クルーズとは何なのか?
その問いに答え続けるために、どれだけ自分を変えてきたでしょうか。

未来永劫、マーヴェリックを演じられるのはトム・クルーズしかいません。

トム・クルーズとして生きるということはどういうことなのか
そんな生き様までが、にじみ出た作品でした。