カメラを止めるな!

本作は、とにかくすごい熱量! ココロがヤケドしちゃいました。

ホラーが苦手な私です。前半は、時計をちら見しながらの鑑賞でしたが。
後半はすっかり、我はどっかに行ってしまいました!

スピード感、荒々しさ、素人っぽさ・・・
どれをとっても、イキのいい体験が飛び跳ねてました。

そもそも本作品は、ネタバレすると面白さが半減するというシロモノです。
私自身、「笑えるゾンビ映画」程度の情報しか仕入れず、劇場に向かいましたが。

第一部は、チープで冗長なゾンビ映画。
第二部の幕があき、撮影の舞台裏が明かされるわけですが・・・

次第に、私は軽く混乱しはじめました。

何が本当で 何がウソなのか・・・
本作品でメガホンをとるのは、上田慎一郎さんという方です。
劇中に登場する監督は、監督役の俳優ではなく、すっかりご本人だと思い込んでましたし。

監督一家も総出で出演し、さらにご自宅にカメラが入る!? すごーい! 
でも、コレ、本当に本当なの? 
このシチュエーションに酔ってもいいの?

普通の映画なら大抵、主役は有名俳優です。作品のなかで良い父親を演じても、頭の片隅にフィクションというテロップが浮かびます

つかの間の虚構にのめりこみ、涙を流すわけです。
ときに、主役が命の危機にさらされても、どうせ最後は助かるよね~と安心を担保できます。

カメラを止めるな!はウカウカできません。
無名俳優のだれが主役なのかすら分からず、予定調和がつかめないのです。

恐怖におののき 逃げまどう 女性のすがた
蛇のようになまめかしく動くカメラワークが、彼女を捉えてはなしません。

運動会のムービーのよう、上下左右にブレながらもストップボタンはもう止まらない!!

まさにカメラと観客が一体となり、スクリーンを駆け抜けたのです。
この生々しさ、身体中に沸きだつ血潮、それは・・・生きている感覚そのものでした。

カメラを止めるな!は、新しい地平を開いた作品ではないでしょうか。

あなた創る人 わたし観る人
これまでの映画は、作り手と観る側とは歴然とした断絶がありました。

ここに伏線はって、ここで観客を泣かせて・・・
ブロイラーのよう、感動を一方的に与えられる。

何もかも完璧に作り込んだものからは、観客が手を出す余地はありません。

それに対して、こんなにもダサかっこいい手作り感にみちている・・・
熱にうかされたよう、観客席を立つだけでは終わりません。

観た誰かと話したくなる。
観てない誰かに勧めたくなる。

どんどん増える上映館・・・勢いを止めるな!
公開後数ヶ月たった今も、まさに今、現実のなかで、作り手と観客たちによる第三部が進行しています。カメラを止めるな!劇場のカメラが止まるのは、もう少し先でしょうか。