セッション
常軌を逸した鬼指導ぶりで話題をさらった音楽映画「セッション」。
パワハラ教師フレッチャーを演じたJ・K・シモンズは、アカデミー賞助演男優賞を獲得しました。
名門音楽学校へと入学し、世界に通用するジャズドラマーになろうと決意するニーマン(マイルズ・テラー)。そんな彼を待ち受けていたのは、鬼教師として名をはせるフレッチャー(J・K・シモンズ)だった。
ひたすら罵声を浴びせ、完璧な演奏を引き出すためには暴力をも辞さない彼におののきながらも、その指導に必死に食らい付いていくニーマン。だが、フレッチャーのレッスンは次第に狂気じみたものへと変化していく。
萎縮する生徒たちに容赦なく暴言を吐き、ときには暴力も辞さないフレッチャー。
彼のレッスンを受けることになったニーマンも、ものを投げつけられ、他の生徒たちの前でこっぴどく罵られるという洗礼を浴びましたが。
チャーリー・パーカーのような偉大なジャズドラマーを目指す一心で、鬼教師フレッチャーに喰らいついたのです。
フレッチャーの常軌を逸した指導に、ニーマンの精神も徐々に尋常さが失われていきます。
渦に飲み込まれていく樣が、アリアリと映しだされてました。
「狂気」
通常とは一線を画する世界ですが、そこに足を踏み入れた者しか許されない ”何か” があります。
しかし、ソレが得るための代償はあまりにも大きいのでしょうか。
- 堪え切れず、引き返してしまった者
- 潰されてしまった者
- 精神が壊れてしまった者
フレッチャーは、多くの才能の残骸をみてきたのかもしれません。
彼自身も含めて。
第二のチャーリー・パーカーは潰れない・・・その信念のもとに、ニーマンを徹底的にぶち壊そうとするフレッチャー。
ニーマンの内側から、徐々に「荒ぶるもの」があぶり出てきたのですが。
それがニーマンにとって、どれほどの犠牲を伴うものか、フレッチャー自身が誰よりも分かっているのかもしれません。
劇中で、フレッチャーと教え子ニーマンが凄まじい葛藤を繰り広げることになります。
ニーマンは窮地に追い込まれ、一度はジャズドラマーの道を諦めました。
フレッチャーの心には、若い才能を潰してしまった無念さと共に、どこか安堵感を宿したかもしれません。
しかし、運命は彼を離さなかったのです。
ラストシーンにて、ニーマンがドラムと一体となって叩き続ける姿に、身体の奥がガクガクと震え、私はただ涙するしかありませんでした。
時空を超え、人の心を揺さぶり続ける その場所は
生ぬるさとは無縁の世界です。
多くを犠牲に払ってでも、踏みとどまった者が放つものが、後世に残っていくのかもしれません。