悪口とウワサ話のあいだ
「人を悪くは言わない方がいい。」
自己啓発書などでは、頻繁に出てくるフレーズです。
ごもっともで、同意する人も多いでしょう。
「悪口は言わないように」と心がけている人も少なくありません。
ところで、人のウワサはどうでしょうか。
一口にウワサ話といえども、です。
さまざまなバリエーションがあります。
当たり障りのないものの代表は、単なる事実を語るモノでしょう。
「あの人、どこそこに旅行に行ったんだって。」
「最近、体調がいいって言ってたよ。」など。
これのみをウワサ話というならば、ほとんど害はないでしょうが。
ウワサ話の範囲のなかに、悪口とのグレーゾーンがあるから厄介です。
グレーゾーン、そこには。
価値判断や批判が入るもの、本人の前では言いにくいものなどが含まれます。
「○○さん、あぁ言ってたけど、自信のなさが見え隠れしてるよね。」
「△△さんの言うこと、ごもっともだけどなぁ、でもココは分かってない気がする。」
この手のものは、露骨な悪口とは言いがたいですが
とはいえ、当たり障りのないと言えるでしょうか。
何より、本人には直接言いにくいものであったり、言ったあとにかすかな気まずさが残るでしょうから。
ひとしきり語ったあと、お口直しが出てきます。
「あの人、すっごくイイ人なんだけどなぁ~。」
悪く言ってるワケではないよ~~のエクスキューズでしょうか。
おおやけに言うのは憚れるが、心のなかに拭いきれないものがある。
だからこそ、ウワサ話という体で分かってくれそうな人に言いたくなる。
そこで共感してもらえたら、気が軽くなるでしょうし。
さらに同意までもらえたら、正当性のお墨付きまでついてくるのです。
それでも、言えることがあります。
「人のウワサ話は、やはり減らした方がいい」
道徳的に考えるだけでなく、合理的に考えても同じ結論でしょう。
ウワサ話のあと、お茶を濁すように褒め言葉を加えても
できるだけ客観的に話そうとしても、です。
聞いている相手は、心の片隅にこう受け止めます。
「あぁ何かあったら、自分もこんな風に言われるんだろうなぁ」
特定の誰かへのジャッジが、自分へと矢印が跳ね返ってきます。
そのデメリットは意外に大きく、看過できないのではないでしょうか。
心のモヤモヤを吹き飛ばす、もっとも気軽な手段として用いられる 誰かのウワサ。
即効性がある代わりに、副作用も多大です。
思いをぶつけて 今すぐスッキリした方がいいのか
自分の評判をすり減らしてまで 口にするほどのことかを
再考してみてもいいかもしれません。