ただの抜け殻となって

先日、15年来の知人のお通夜に参列しました。

数年前の大手術のあとも、精力的に活動していた彼の姿をみていた私にとっては 思いもしなかった訃報でした。

情熱はひしひしと伝わってくるものの、人にはいつも穏やかな笑顔で接してくれた彼。

誰からも慕われていたお人柄を表すかのように、大勢の人が彼の元へと駆けつけたのです。

柔らかく微笑む遺影と対話していると、彼との思い出がワルツのように流れていきました。

 

「どうか、お顔をご覧ください」

お通夜の終わりにアナウンスが流れ、棺へと向かいました。

あぁ 今生の別れか・・・ こみあげるものが、今にも溢れ出しそうです。

しかし、永遠の眠りについた彼の姿を一目みた途端、思わず息を呑みました。

そこにはもう、抜け殻しかなかったのです。

最後の1秒まで生き抜いたあと、潔く旅立っていった男の姿でした。

 

その枯れた美しさを前に、どれだけ大きな花を咲かせたのかと、思いを馳せずにいられません。

 

彼が生きた痕跡は、大地へと還っていきました。

この世界の循環のなかで、生きている私たちの元へと巡りくるでしょう。

死に様は生き様という言葉があるように

そのときは何の未練も残さず、ただの抜け殻となって、私も大地へと還っていきたいです。