【エッセイ78】苦手意識は何を守ってくれている?
「そうか! だから、研修や講演が苦手だったんだ!」
ここ数年、マンツーマンのコーチングだけでなく、セミナーのトレーナーとして人前で話をさせていただく機会も増えました。
研修や講演はこれまでも何度となくしてきましたが、実は、研修や講演に対する「苦手意識」が結構ありました。(そうは見えないかもしれませんが(笑))
その「苦手意識」があったため、どうしても研修や講演があると気が重くなり、自ら積極的に引き受けることはしませんでした。
しかし、あるとき、
「『苦手意識』によって、自分は一体、何を避けようとしてきたのだろう?」
そう思って、苦手意識そのものをじっくりと見ていったのです。
そうすると、「そうか! だから、研修や講演を苦手なものとし、避けようとしていたのか!」と、思いがけない発見がありました。
何を発見したのか?
自分の中に「すべての人に満足してもらいたい」という欲求があったことに気づいたのです。
「すべての人に満足してもらいたい」という思いは、現実的に考えると、絶対に叶えられないことだというのは頭ではわかります。
では、「すべての人に満足してもらいたい」という思いの奥にあるものは何だろう?」
そう探っていったときにわかったことは、「ガッカリさせたくない。ガッカリするところを見たくない」ということでした。
そのことに気づいたとき、いくつかの場面がフラッシュバックしてきたのです。
かつてセミナーをしたときに参加者の一人がとてもガッカリしたように見えて、ショックを受けたときのこと。
他の講師がセミナーをしているとき、受講生の中にとても反発する人が出て、セミナーを混乱の渦に巻き込んだときのこと。
そういったショックや恐怖が根底にあるので、研修や講演に対して「苦手意識」を持つことによって、そういったショックや恐怖を体験しないですむようにしてくれていたことに気づいたのです。
ショックや恐怖を感じたくないという気持ちは今もあります。
同時に、そういうショックや恐怖を感じたとしても立ち直れないほどダメージを受けてしまうのかというと、当時はそうだったかもしれませんが、様々な経験も積み重ねてきた今は、きっと大丈夫だ。
そう思えたとき、ふと力が抜けて、「苦手意識」が減ったのです。
そう、「苦手意識」は私がショックや恐怖を体験しないですむように守ってくれていたガーディアン(守護者)だったのです。
ただ、その守護者は、いつまでも私のことを「ショックや恐怖を体験したら立ち直れない弱い存在」と思い込んでいたために、ずっと私を守ろうとしてくれていたのでした。
今も「苦手意識」はあります。完全に無くなってしまったわけではありません。
そんな「苦手意識」が出てきたときは、守護者にこう話しかけます。
「これまで傷つかないように守ってくれてありがとう。これからもショックで傷つくことはあるかもしれない。でも、大丈夫。それでもそこから立ち直る力も養ってきたから」
お陰様で、守護者も少しずつですが、今の私を認めてくれるようになってきたようです。