【エッセイ89】KUMONはアレと似ている
「そういえば、KUMONって、アレと似ているな~」
小学生の頃、公文式の教室で算数を習っていたことがあります。
将棋の羽生善治さんや能楽師の野村萬斎さんが出ていたCMを見たことがある人もいるでしょう。「KUMON」の看板がかかっている家が近所にあるという人も多いかもしれません。
そう、あの公文式。
計算問題が書かれた用紙に答えを書き、間違えたら解きなおし、100点を取ったら、ちょっと難しい計算問題が先生から渡される。
ご存知かもしれないが、公文式の教材は、一般的な塾で学ぶのとは違う特徴があります。
普通、塾は学校での勉強の少し先を学ぶことが多い。
難関校合格を目指す進学塾であったとしても、基本的には上の学校に行くための勉強を教えるのであって、小学生に高校や大学で学ぶような数学を教える塾はありません。
だが、公文式は違う。
小学校3年生だから、3年生が学ぶ教材を習う、わけではない。
公文式の教材は、年齢や学年の縛りはない。
解けば解くほど、上の学年の問題がドンドン出てくる。
だから、小学生が高校3年生で習う微分積分の問題を解いているなんてことが普通にあります。
別にここで公文式の宣伝をしたい訳ではない。それは萬斎さん親子に任せておこう(笑)。
なぜ、KUMONの話をここで出すのか?
この公文式のシステムが、アレと似ているからです。
アレとは?
仕事。
あなたが取り組んでいる「仕事」です。
似ていると言ったが、イヤ、似ているなんてレベルではない。
仕事そのものだよ、KUMONは。
解けば解くほど、難易度の高いプリントが先生から渡される公文式。
問題を解決すればするほど、新たな問題がやってくる仕事。
KUMONも仕事も、今の自分の実力より、ちょっとレベルが高い問題を解こうとしているときは、結構しんどかったりします。
だが、なんとかそれを解いた後は、筋トレをした後のように、力がついているので、以前なら解けなかった問題も解けるようになっている。いつの間にか、楽勝で解けるようになっている(かもしれない)
仕事をしている人ならわかると思います。
管理職やリーダーとして、毎日、色々問題を抱えながらも仕事をこなしていると、自分のできていないところ、足りないところ、ダメなところに結構、目が行きがちになります。
「なかなか、うまくいかないな……」
「どうして、できないんだ……」
「なんで、オレはだめなんだ……」
と、ぼやきたくなる日もあるでしょう。
だけど、いや、だからこそちょっと思い出してほしい。
新入社員の頃、必死で取り組んでいた仕事、できるかどうかものすごく悩んでいた仕事は、今のあなたからすると、何でもないレベルになっていることはないでしょうか?
そう、着実に力はついている。
必死で筋トレしていたときの筋肉痛は、ちゃんと筋肉に変わっています。
だから、次の課題、問題がドンドン降ってくるわけだが、さすがにこれがずっと続くと思うと、
「休むヒマも与えられないのか……」
と、ちょっとゲンナリするかもしれない。やるせない気持ちになるかもしれない。
だが、安心してください。
決して、KUMONも仕事も筋トレも、休んではいけないことはありません。
KUMONに通っていた最初の頃は、問題を解くのが楽しくて、どんどん先に進みました。
気が付いたら、小学生のときに中学校で習う方程式まで進んでいたのです。
だが、そこで頭打ちになりました。
限界だったのです。
枚数を減らした。
ちょっと休んだ。
周りの友達は、さらに先に行っている。
置いて行かれたような情けない気分になった。
だが、ちょっとホッとしたのも事実です。
結局、算数はやめて英語に変更したけれども、KUMONで先取りして学んだおかげで、中学校の数学はあまり苦労しませんでした。
先取りは結構きつかったけど、そのおかげで助かったこともあったわけです。
KUMONと仕事は似ています。
次から次へと出てくる問題をどんどん解いていくときもあれば、
壁にぶち当たって頭打ちになるときもある。
ちょっとペースを落とすときもあれば、別の教科(仕事)に切り替えるときもある。
そして、いつか辞める(退会、退職)するときがくる。
KUMONも仕事も、そして人生も、
解いても解いても、どんどん次の問題、次の問題が出てくる、
終わりがないから、しんどいと思うか、
終わりがないから、たのしいと思うか。
どっちの気分も選ぶことができるし、
進むことも休むことも選ぶことができる。
KUMONも仕事も、そして人生も。